父が私を認識しなかったことについては、思ったよりショックではなかった。
からかわれたかもしれないと思ったからかもしれないし、子供のころからの父との関係を思い出してみても、お互いに確かに親子には間違いないが、思い入れが薄いというか、それよりショックな思いを思春期に父から受けていたせいかもしれない。
そのことを母に話すと、そういう事実があったことには驚いていたが、それなら無理もないねという感想だった。
いくつの頃かは忘れたが、家を訪ねてきた人に母が留守だったので私がお茶を出した。その時にその人が「娘さん一人じゃさびしいでしょう?」と父に尋ねたとき、父が「息子だったらよかったんだけど、娘一人だからねぇ、いないほうが良かったのに」と答えたのだった。
そうか...いない方が良かったのか。
それから、父とはあまり会話をしなくなった。その後間もなく、私は高校を卒業して家を出た。
そして、電話をかけても父が出るとすぐに母に代ってくれと言うようになった。
自分が子供を産むときにどうしても男の子がほしいと思ったのは、そのことがあったからかもしれない、今になってふと思う。父のために、男の子を産もうと思ったのか?
実家からの帰りにもう一度病院に寄った。
昨日と同じように母が父に尋ねる「この人だれ?」
「わからない、見たことはあるような気がする」
ま、いいや。



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